代表ご挨拶

■Literatusについて

Literatusは実務者、研究者という二人の創業者の思いによってつくられた会社です。”Literatus”とはラテン語で、英語のLiteracy[リテラシー]の語源であり、「教育を受けて字を知っているもの」を意味します。私達が専門にする建築、「衣・食・住」の「住」という非常に生活に身近な分野でもありながら、専門過程の大学等に入らない限り、体系的に学ぶことのないものです。また、建築工学だけでも、意匠設計、構造、設備、環境工学、材料学…など専門性が別れ、さらに視野を広げれば芸術学、都市学、社会学、経済学と広範囲な技術を必要とする分野であり、一部門を専門にする方でも門外漢の分野が結構あったりします。

専門教育を受けた方も、専門教育を受けていない方も、生活の中で「建築」に触れない日はないと思います。また自分の家、会社の社屋、投資物件、相続による不動産経営、不動産開発会社への就職、など建築に関わるきっかけは様々だと思います。初等教育(小学校、中学校)でもっと『建築社会科』のような学びの機会があれば、ある日突然建築に関わることになっても、デパートで服を選ぶような感覚で立ち向かうことができる。建築高等教育の中で、「建築プロセスの管理」や「発注者との付き合い方」をもっと実践的に学べたら、トラブルの減り、満足度の高い技術者に成長できる、そんな機会をLiteratusは『教育』という軸の中で提供していきたいと考えています。

【代表メッセージ】

わたしはデザイン事務所、組織系設計事務所、ゼネコン、デベロッパー、コンサルティングと様々な職を点々としてきました。突出した技術力はありませんでしたが、顧客の勘所を抑えたりコミュニケーションしたりという営業的側面から、あまり深く悩まずとりあえずなんでもやってみる、自分で手を動かしてみるいい加減さで、どこに行っても「なんでも器用にこなす使い勝手のいいやつ」と思われてきました。

プロジェクトマネジメントに携わるようになっても、比較的スムーズに自分なりのマネジメントを身につけていくことができたのですが、一方で毎日遭遇する多様多種な問題の数々がそこにはありました。建築というのは様々な「期限」があります。行政申請を出すまでに、部材発注するまでに、契約するまでに、、、とにかく出てくる問題は即日解決していかないとすぐに「工程遅延」に陥ってしまう。『問題の本質』を考える時間もなく、とにかく進めるための課題解決をする日々でした。

これらの経験をPMp代表と日々議論し、互いの目標である「ひとの可能性を拓く」ために何ができるか、を考え抜いたのが『プラットフォーム型コンサルティング』です。

・課題には「どうやるか?(解決するか)」をいきなり考えるのではなく「そもそも」「why」「wtat」を検討する

・それぞれのステークホルダーが専門領域の技術に加え、「プロジェクトマネジメント」を学ぶことで自分の役割と責任、プロジェクトへのコミットの仕方を身につける

・プロジェクトに対して自分自身が直接コンサルティングするのではなく、自分自身が培ってきた技術力をコーチングしていく

以上の3つのプログラムを構築し、その結果「プロジェクトマネジメント」の本質は「付加価値の向上」ではなく、「基本的価値の確保」にあることに気がつきました。戦略コンサルタントなどはそれを行う人材によって技術力や考え方に差異はありますが、プロジェクトマネジメントに関して言えば「料理のレシピ」と同じく誰がやってもある程度同じ結果をもたらすものであり、そこには「基本的価値」がしっかりと確保されているものだと思います。

さて、ではこの基本的価値、期待する側と提供する側とで揃っているでしょうか。建築発注者はよく「デザインに期待する」と言う一方で、「このデザイナーに頼むといつも(建築費が)高くなる」とぼやいています。発注者の方、その契約書には「コスト管理」が業務に入っていますか?デザイナーの方、付加価値の説明は良いですが、基本的価値はどこにありますか?

わたしのもう一つの確信は、「価値の定規」をつくり、そのスケールをプロジェクト関係者間で揃えることの重要性です。PMpポータルサイトにはこれら様々な情報や、先達の方々の成功・失敗事例、課題解決のヒントがたくさん公開されていきます。PMpの神保町本社でも定期的に研究者・実務者交流を行います。まずはPMpの情報と価値を見に来てみてください。そして、頭の片隅に「困ったときにはPMpに相談してみよう」と置いておいて頂けたら幸甚です。

【創業協力者メッセージ】

Literatusはわたしが関わってきた研究・教育・実務の3つの領域に関わる場です。わたしは大学で建築を学びました。
成績は落ちこぼれでしたが、ある建築家との出会いで建築というものが好きになりました。
例えば、シドニーオペラハウスの設計競技で、当時無名のヨン・ウッツォンが描いた「海に伸びる基壇」のスケッチに込められた「この年若い国の礎をつくる」という思いを、審査員だったエーロ・サーリネンが正しく汲み取って一等賞に選んだこと。
そのサーリネンが設計したTWA空港のターミナルでは、子どもの頃にアメリカに移住したサーリネンが経験した「出会いと別れ」が劇的に演出されていること…。
古今東西の建築家の話を聞き、ひとつひとつの建築に込められたストーリーを知るうち、建築そのものよりも建築をつくるプロセス、そこに関わる人々に自分は惹かれるのだと気づきました。
そして、取り立てたデザインセンスやプレゼンテーション能力がなくてもわたしなりのやり方があると示してもらったことで、同じように自分もひとの可能性を拓きたいという希望を持ったのが大学生の頃でした。

また、実際のプロジェクトのお手伝いもさせていただくようになりました。
その中で、順調に進んでいたかのように見えたプロジェクトが発注者の方との行き違いで決裂して止まってしまったことがあります。
何が悪かったのかわからず、とても落ち込みました。
発注者の方はとても熱心で、毎日のように現場に来られていたし、たくさんの夢を描いていた。
それを皆で力を合わせて実現しようとしていた。
なぜ、お互いの思いがプロジェクトの中断という結果になってしまったのだろう、どうすればよかったのだろう…。
この出来事は、わたしの原点のひとつです。

そんな思いを抱えて大学院に進学し、プロジェクトをうまく進める、設計者と施工者が連携する、ということをテーマに据えて研究をはじめました。
かつての日本の建築家がどのようにプロジェクトを進めていたか、それが現代にどのように引き継がれているのか、あるいは引き継がれていないのか。
キーワードは役割分担です。
設計者が施工者の業務範囲を、あるいは施工者が設計者の業務範囲をカバーし、役割分担の抜け漏れなく、密な情報共有をしながらプロジェクトを進めていた実態が見えてきました。
また、ヒアリングや資料調査の一方で、国内外の「マネジメント」という概念も学びました。

博士論文を書いて学位を取り、教鞭を取りはじめたのは、とある女子大学の建築学科でした。
建築業界は女性の進出が最も遅い業界のひとつです。
「建築を学ぶ女子学生のキャリア」が通奏低音のように意識の底にありました。
論文や設計の指導をしていると、学生ひとりひとりが持つ世界の多様さに、ほんとうに驚かされます。
熱意と希望にあふれた学生たちですが、今後のキャリアについてはとてもシビアに考えていました。
それぞれの可能性が花開いてほしい、思いが報われてほしい。
自分にできることは何なのだろう。
そんなことを日々考えていたように思います。

一方で、研究を続ける中では実態が実感としてわからないことを痛感し、実際のプロジェクトがどのように進み、どのような出来事が起きるのかを身をもって体験したくなりました。
そうして研究者・教育者から転身して就職した建築のマネジメントの会社では、仕事に恵まれ、様々なプロジェクトの実態を知りました。
所有者、運営者、設計者、施工者…それぞれの思いがぶつかりあう現場。
土地選びから、設計者・施工者の選定、設計・施工の期間を経て竣工・引き渡しまで、プロジェクト・マネジメントに関わることができたり。
建築プロセスを通して、発注者の支援者として品質管理業務を担ったり。
技術力も経験もないわたしでしたが、役割分担のスキマを埋める役割に注力することで、喜ばれたり、感謝されたり、プロジェクトをスムースに進めることに寄与できたのではないかと思います。

わたしが研究していた設計者と施工者の連携では、どちらかが互いの領域に踏み込んでカバーをすること、ラップをすることで役割分担のスキマを塞ぎ、結果としてプロジェクトを成功に導いていました。
けれども、建築プロジェクトが複雑化してシンプルな役割分担が少なくなり、関わる関係者が増えるほどに役割分担のスキマも増え、トラブルも増えます。
すると、関係者が皆、それぞれの本来の仕事ができなくなって疲弊していきます。
プロジェクト・マネジャー、コンストラクション・マネジャーとして役割分担のスキマを埋め続けたことは、ある種のゴミ拾いにも似ていました。
誰もがやりたがらないけれども、誰かがやらなくてはならない仕事。
ひとつひとつを放っておいて大きな影響があるわけではないけれども、積もり積もるとプロジェクトをストップさせてしまうものを取り除いていくこと。
しくみとして役割分担のスキマを減らす試みが、PMpの「役割タイル」です。

プロジェクトマネジメントプラットフォーム(PMp)は「ひとの可能性を拓く」というミッションを掲げ、「自分の望ましいあり方をプロジェクトマネジメントを通して実現すること」を可能にするためのプラットフォームです。
建物を建てようとする発注者の事業の可能性を拓くこと、その発注者個人の可能性を拓くこと、プロジェクトに参加する設計者や施工者、その他様々なステークホルダーの可能性を拓くこと、成長に寄与すること。
プロジェクトの参加者ひとりひとりが本来の価値を発揮するためのマネジメント、その面白さと豊かな可能性を確信し、わたしはPMpとして小さな一歩を踏み出しました。

ここがあなたの可能性を拓く場となりますよう、力を尽くしていきたいと思います。

”建築”に関わる全ての人の”成長”に寄与することで、暮らしやすい生活、街(都市)、環境(社会)を共創し、 誰もがQOL(Quality of Life)を向上し続けられる社会をめざします。

建築プロジェクトマネジメントが切り開くplatform